中古車販売大手「ビッグモーター」の複数の現役社員が、パワハラの実態を語りました。LINEによる業務連絡が1日に2000件に及び、サービスをめぐって自腹を切らされたこともあったといいます。
◆「ロイヤルファミリー」が実権握りおかしくなった
現役社員A氏
「われわれ社員の中では『ロイヤルファミリー』と呼ばれていたんですけどこの3人が5~6年前からぐらいから会社の実権を握るようになって本当に会社がおかしくなってきた」
当時の経営の実態を語るのは、ビックモーターの現役社員A氏です。「ロイヤルファミリー」と呼ばれるのは、先週火曜日に開かれた会見で辞任を発表した兼重宏行前社長の息子宏一前副社長を含む役員3人です。3人は、1か月に1度、店舗を視察する「環境整備」で社員に恐怖を植え付けていたとA氏は話します。
現役社員A氏
「3人が来たら、確実に誰かが降格になり誰かが県外に飛ばされ誰かが退職するというのが恒例でした」
3人は、特に店長に対して理不尽な要求を突きつけていたとみられ、A氏は店長時代、圧力に耐えきれず、降格を受け入れることにしました。
◆「LINEの音が恐怖だった」
現役社員A氏
「平気で『やめさせろ』とか『この社員を飛ばせ』とか、それができなかったら『結局そういうこともできないんですね、店長としての能力もないですね』というところにつながります。あまりにもひどくなってきたのでこのまま店長をしていても精神的におかしくなりそうで自ら店長をギブアップしました」
店長時代に、常に恐怖を感じながら店舗に立っていたA氏。理不尽な要求の大半は、LINEでの指示でした。
現役社員A氏
「LINEは休みの日でも容赦ない。1日放置していたら1000件ぐらい平気で入ってくる、ちょっとでも返信が遅れたら『使えない』だのなんだの言われて。LINEの音が恐怖で本当に嫌でした」
◆1日2000件超える業務連絡 吊し上げも
九州管内にある店舗で店長を務めるB氏もLINEに悩まされてきました。
現役店長B氏
「朝から晩まで何かしらのLINEがくる状態。休みとか関係なく1日2000件から3000件くらいは来ていたのではないか」
1日に2000件から3000件に及ぶというLINEのメッセージ。中には、個人をつるし上げる内容も含まれていたと言います。
現役店長B氏
「罵声とかもたまには飛び交っていましたね。『店長をやめろ』とか『適性がない』とか、たまに見ましたね」
◆草1本生えていたら「減点」の対象
ビッグモーターを巡っては保険金の不正請求に加え、全国各地で店舗の前の街路樹や植栽が枯れているのが確認され、除草剤をまいていた疑いが取り沙汰されています。B氏は取材の中で「草1本あったら減点」という言葉を口にしました。
現役店長B氏
「点検で草1本あったら減点されてしまうので、敷地の外10メートルはきれいにしておかないといけない。点検で見られた時に雑草があっただけでその項目は×にされてしまうので。点数が悪かったら店長の適性がないということで降格になったり。自分はありませんでしたがそういう店舗もありました」
◆自分の生活守るために「顔色みて仕事した」
また会社が、利益至上主義に走る中、客をつなぎ止めるために自腹を切ることもあったと証言しました。
現役店長B氏
「色々な形で自腹は切っていました。顧客にコーティングをサービスでやると、後で『コーティングの料金はもらっていないのになんでコーティングをしているんだ』となって、そのコーティング料金を自腹で払わされる。軽自動車で1台4~5万円くらい、。ミニバンだと7~8万円くらい。原価は2万円くらいしかかからない、原価の2万円を自腹でというなら話は分かるんですけど、一般料金の4~5万円を自腹させる、会社に粗利を入れる」
休みの日にも業務に関するLINEが届き続け、さらには、自腹も切らされる、そんな劣悪な環境でも幹部に逆らうことはなかったと話します。
現役店長B氏
「自分の給料、生活を守ることが一番。幹部に疑問を少しでも言えば、脅かされて給料も大きく変わってしまうので、上の顔色を見ながら仕事をしていたというのは正直あります」
次々に明らかになるパワハラの実態、ビッグモーターには和泉伸二社長が就任し、さっそく社員にLINEの削除を指示しました。和泉社長は証拠隠滅が目的ではなく、社員の負担軽減が狙いとしていますが、上の顔色をうかがうのではなく客の目線に立って従業員が働ける企業に生まれ変わることはできるでしょうか。
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